2023.11.01introduction● 日本は高齢化が進行しており、今後高齢者の医療ニーズが増加していきます。一方で、働き手は人口減少に伴って確保が難しくなっていくことが予想されます。医師の働き方改革をはじめ、医療スタッフの負担軽減のために業務効率化に向けた取り組みが求められています。● 医療の現場において、治療・検査等の集計作業や統計資料の作成作業など定型反復業務が多く見られます。これらを人がやるべき仕事とロボットに代替する仕事に仕分けして、ロボットにできる仕事をどんどん任せていくことでスタッフの負担軽減を図る医療機関が少しずつ見られるようになってきました。さらに、人手をかけては難しかった負担が高い繰り返しの業務(例えば、入院患者全員の電子カルテ画面を開き体温を調べるなど)を代替させ、医療サービスの価値向上を実現しようとしている事例もあります。● 単純な反復業務からスタッフを解放し、さらに、あったほうが良いと思われる情報を整理していつでも見ることができる状態にしておく、この体制作りが重要になってきました。これをRPAを使って実現するためには、置き換えたい定型反復業務のシナリオを作成していく必要があります。 ● ここでは医療機関におけるRPAのシナリオ作成担当者に向けた、シナリオ作成時のポイントをお伝えいたします。● 今回のテーマは、シナリオ作成から運用までの流れです。 RPAの基本概念● RPAとはパソコン上の操作を記録し、記録したとおりに実行するソフトウェアです。● 詳しくは、こちらのコラムをご確認ください。● https://service.nkgr.co.jp/rpa/news/posts/vMeJOx5y● RPAツールとプラットフォーム:● 製品としては純日本製のWinActorについてご紹介いたします。他の製品としては、UiPathやBizRobo!、Power Automateなどが有名です。それぞれの製品に特徴があるものの、パソコン上の操作を記録し、記録したとおりに実行するソフトウェアという点で差異はありません。開発プロセス● さて、本題に入ります。● RPAボットの開発プロセスについて説明します。● プロセスは、業務の選定、要件定義、設計、開発、テスト、仮運用、本運用という流れになります。● それぞれのポイントを簡単にお伝えします。● まず、業務の選定においては「頻度」と「年間当たりの削減時間」を元に、対象となる業務を選定します。なぜ頻度が重要かについては、以下のグラフをご覧ください。年間60時間投下している業務でも、発生頻度が日次の場合、1回当たりの作業時間は0.16時間(10分弱)ですが、発生頻度が年次の場合、1回当たりの作業時間は60時間です。つまり、シナリオを作成する際に10分程度で終わる工程をRPAに記録させることと、60時間もかかる工程をRPAに記憶させることを比較した場合、削減効果は等しくても前者のほうが遥かに作成時間を短く、楽に、RPAへ代替できるということになります。長く複雑なものはエラーが出る可能性も高くなるため、「年間当たりの削減時間」だけではなく「頻度」を考慮することが重要なのです。 日次週次月次年次1回当たり作業時間(時間)0.161.25560合計(時間)60606060● 次に要件定義、設計です。RPAのシナリオ作成においては、基本的に「既に存在する業務」の置き換えがメインで、0から業務を作るということはあまりありません。● 一般的には業務の担当者にヒアリングをして、業務の流れを確認します。話を聞くときのポイントは、最終的に改善イメージの確認、最低限どこが自動化できればよいかです。もちろん、検索する条件や作業の1つ1つのステップも重要ですが、ゴールと妥協点を確認することのほうが重要です。例えば、カンファレンス資料の作成を自動化したい場合、システムからデータを出力して、データを整形していたとします。データの出力に5分、データの整形に1時間かかっている場合、負荷が大きいのはデータの整形の作業です。データの整形を自動化できれば最低限よく、アウトプットにはどういうデータが表示されていればいいかを確認することが重要になります。● ゴールは、実現可能性を判断する場合や、手順通りではうまくいかず別の代案で処理する場合に判断する軸となります。RPAはパソコン上の業務を記録できますが、どんなことでもできる有能なものではありません。恐らくこの先どこかで自動化できない作業が出てきます。その際に全て無理やり自動化するのではなく、手間だと感じている部分の業務だけでも代替できればいいのです。作業手順は担当者に書き起こしてもらうこともできます。● 開発とテストです。マクロ等のコーディングとの違いは、細かくテストしながら作ることです。2~3個手順を記録したら、動くか確認して、動けば次へ、動かなければ原因を追求し動くようにする。この繰り返しです。そして、正常系の一連の流れができたら対象データや正常系・異常系の考えられるパターンをテストします。● テストで異常がなくなれば、仮運用になります。しかし、RPAはここからのエラーが出やすいので注意が必要です。開発する時間帯と自動実行する時間帯の違いや、端末の違い、テスト時とのデータ量の違いなど、様々な影響を受ける可能性があります。また、RPAの処理速度が速すぎて、ボタンをクリックした判定なのに画面が切り替わらないなど空振りをしてしまうケースもあります。こういった最終調整は、止まりやすいところにリトライするような処理を組んだり、まるで人が操作するように画面がしっかり表示されるまで「待つ処理」を入れたり工夫することで回避できます。● 以上の工程を乗り越えて、本運用となります。● 慣れないうちは、エラーがたくさん出て大変なこともありますが、エラーにはパターンがあります。開発を続けるうちに、ここはこういうエラーが出るかもしれないから対策が必要だなと勘が働くようになります。結論:1. RPAによる業務の代替で早く成果を出すには、日々行っている定型反復業務に着目しましょう。2. 業務についてヒアリングする場合は、最終的な成果物の確認と業務工程の全体における大変な部分の確認と、どこが自動化していれば負担軽減になるのか最低ラインを探しましょう。3. エラーで動かない場合は、原因を追求し、どこを回避したらうまく動きそうか試行錯誤し改善しましょう。最後に、日々のちょっとした業務をRPAに代替していくことを積み重ねていくことで大きな成果につながります。まずは、簡単なところから着手してみましょう。次回は、医療情報システムなどの画面操作で気をつけるポイントについて解説します。