骨太方針の重要さ令和6年6月21日、「経済財政運営と改革の基本方針2024 ~賃上げと投資がけん引する成長型経済の実現~」(骨太方針2024)が経済財政諮問会議での答申を経て、閣議決定されました。https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/cabinet/honebuto/2024/decision0621.html出所:「「経済財政運営と改革の基本方針2024」(骨太方針2024)」昨年も骨太方針2023が出た後、下記の弊社お役立ちレポートを執筆しました。https://nkgr.co.jp/useful/hospital-quality-organization-99709/出所:「骨太方針2023から考える医療DX・病院DX」毎年の骨太方針は、閣議決定という全省庁の合意事項であり重要な意味を持ちます。厚生労働省のみの所管となる診療報酬改定よりも影響度はあると考えられるため、把握しておきたい内容です。人口減少社会下での“賃上げ”と“労働生産性向上”骨太方針2024のメインテーマは、やはり“賃上げ”になっています。本文中にも「物価上昇を上回る賃金上昇を達成し、定着させる。」や「2024年度診療報酬改定で導入されたベースアップ評価料等の仕組みを活用した賃上げを実現するため、賃上げの状況等について実態を把握しつつ、賃上げに向けた要請を継続するなど、持続的な賃上げに向けた取組を進める。」などの文言が記載されています。これは人口減少の中で求められる生産性向上という文脈で語られています。本文中にも「最低賃金は、2023年に全国加重平均1,004円となった。公労使三者で構成する最低賃金審議会における毎年の議論の積み重ねを経て、2030年代半ばまでに全国加重平均を1,500円となることを目指すとした目標について、より早く達成ができるよう、労働生産性の引上げに向けて、自動化・省力化投資の支援、事業承継やM&Aの環境整備に取り組む。」とあります。DXやロボットの導入など、自動化・省力化投資や、元々の経営体のコスト構造変革としてのM&Aなどにも触れられています。労働生産性向上のための医療DX・病院DX生産年齢人口減などの変化に対応するため(医療・介護・こどもDX)の項目では、前年(骨太方針2023)でも記載されていた「「医療DXの推進に関する工程表」に基づき、「全国医療情報プラットフォーム」を構築するほか、電子カルテの導入や電子カルテ情報の標準化、診療報酬改定DX、PHRの整備・普及を強力に進める。」が再度、記載されています。生産年齢人口が減少する中で、労働生産性を上げるための医療DX・病院DXは必須になると思います。詳細は以下の弊社お役立ちレポートをご参考ください。https://nkgr.co.jp/useful/hospital-strategy-finance-organization-quality-104201/出所:「生存戦略としての病院DX」DXだけでなく、今回の骨太方針では自動化についても触れられています。本文中にも「人手不足感が高い業種において、AI、ロボット等の自動化技術の利用を拡大するため、業界団体による自主行動計画の策定を促す。それらの業種において導入が容易なロボットについて、ハード・ソフト両面の開発を促進する。」とあります。弊社でもパソコン内のロボットであるRPAの導入支援を行っていますが、それだけでなく院内搬送ロボットなど、情報面の変革であるデジタル化だけでなく、物流面などの変革としてのロボットなどの自動化を推し進める内容になっています。何らかの支援策が進むと予想しています。【弊社:RPA導入支援サービス】https://service.nkgr.co.jp/rpaPMIによるリソース効率向上個人的には骨太方針2024の中で、事業承継やM&Aの環境整備に取り組むという文脈で“PMI(Post Merger Integration:M&A後に行われる、組織や業務の統合作業)”の推進に着目しました。本文中にも「地域金融機関に対し、PMIを含め、M&Aの支援を強化することを促す。」という記載があり、気になりました。地域金融機関への促しということなので、金融庁も含めた動きがあるのだと推察します。以前、弊社のお役立ち情報として以下のレポートを公開しました。https://nkgr.co.jp/useful/hospital-strategy-finance-organization-quality-103062/出所:「グループガバナンスを高める医師マネジメント」上記レポートの中で「グループ病院はリソース効率が悪化しやすい?」という章を設けています。病院業界においては規模を拡大することで、リソースは確保しやすくなりますが、管理コストが増えて規模の経済性が効かず、コスト構造が悪化するケースがあることを紹介しました。つまり、リソース効率を上げられていないケースがあるということです。今回の骨太方針でもPMIは事業承継支援の文脈で語られています。医療法人の第三者への事業承継では、出資持分譲渡として、売り手側法人の法人格を残したままの形態が多いと思います。譲渡後すぐに事業を軌道に乗せる意味では有効な方法ですが、その後、人事制度を統一して人員を施設・部署間でシェアしたり、建物を一つにして資産効率を上げたりしなければ、上記レポートで指摘したようなリソース効率の悪化につながるケースがあります。人口減少社会下で生産性を上げるためのPMIという、今回の骨太方針での文脈から考えれば、単なるM&Aだけではリソース効率が上がりません。組織の再編・統合だけでなく、その後のPMIまで踏み込み、組織を融合させ切らなければ労働生産性などのリソース効率が向上しないのだと思います。そして、PMIの一つの論点として情報システムの統一化と、それに伴う組織変革・コスト構造変革としてのDXが求められます。骨太方針から逆算した経営計画前述したように、今年導入されたベースアップ評価料など各種賃上げは今後も続きます。最低賃金も上がり続けます。物価も上昇しています。従来と同じ事業構造やコスト構造を維持することは難しい状況です。そこで、M&Aや地域医療連携推進法人などを活用して、組織を再編・統合し、さらにPMIまで踏み込んでリソース効率を上げる必要があります。施設・部署間で人員をシェアできるために人事制度の融合や組織変革・コスト構造変革を実現する病院DX、さらには物流変革としてのロボットなどの導入が求められていくと思います。骨太方針2024にも「AIホスピタルの社会実装を推進する」とあります。生産年齢人口が急減する2040年を見据えたあらたな姿を構想し、そのイメージから逆算した中期経営計画、事業計画を立案することが必要です。そのヒントになるのが毎年の骨太方針だと思います。なお、弊社では、単にデジタル製品の選定・導入支援などデジタル化のお手伝いだけでなく、中期経営計画策定支援なども行ってきた実績を踏まえて、将来人口推計などから考えた“真の病院DX”をご支援しています。ご関心がありましたら、お気軽に弊社担当者へご相談ください。【弊社:病院DX支援特設サイト】https://service.nkgr.co.jp/