デジタルトランスフォーメーション(DX)は、医療業界においても急速に進行しており、その投資判断に関する考え方や進め方についても、重要度がますます高まっています。DXへの投資でまず考えるべきことは、「最終的に得たい成果やメリットが何か?」であり、経営視点、患者視点、職員視点など様々な角度から検討することが求められます。一般的には、医療の質と効率性向上、患者ケアの改善、医療従事者の労働負担の軽減、そして医療コストの削減に寄与するといわれますが、具体的にはどのような成果が実現できるのでしょうか。例えば、電子カルテ(EHR)や遠隔医療(テレメディスン)の導入が進むことで、患者の診療情報がリアルタイムで共有され、診断や治療のスピードと正確性が向上します。これにより、患者の待ち時間が短縮され、迅速な対応が可能となります。また、遠隔医療は地理的な制約を超え、地方や過疎地でも専門的な医療サービスを提供できるようになります。さらに、AIや機械学習を活用した診断補助システムを活用することで、医師の診断精度を向上させるとともに、診断にかかる時間を大幅に短縮できます。結果として、より多くの患者に対応することが可能となり、医療サービスの質向上に繋がります。また、DXへの投資は医療従事者の労働負担を軽減する効果もあります。職員の業務をシステムやロボットへ代替することで、ルーチン業務が効率化され、医療従事者はより専門的な業務に集中できるようになります。これにより、労働負荷による退職リスクが低減し、人材定着に繋がると考えられます。医療機関全体のコスト削減にも大きく寄与します。効率的な管理システムやデータ分析ツールを活用し、院内の状況を可視化することで、在庫管理や資源の最適化が可能となり、無駄なコストが削減できるかもしれません。DX投資を成功させるための基本ステップ医療のデジタルトランスフォーメーション(DX)投資を成功させるためには、三つの基本ステップを踏むことが重要です。DXを推進する際には、前提として明確なビジョンと戦略(ありたい姿やゴール)を設定することが不可欠です。これは、組織全体が一貫した目標に向かって進むための指針となります。第一ステップとして、技術インフラの整備、すなわちデジタイゼーションが求められます。これは、電子カルテ、部門システムを導入し、院内の情報連携の基盤を構築することを意味します。近年では、サイバー攻撃事件を踏まえ、データ暗号化、アクセス管理などの多層的なセキュリティ対策を講じることが求められます。第二ステップとして、連携された情報の利活用、つまりデジタライゼーションが必要になります。導入したシステムを最大限活用するためには、日々現場で業務に取り組む職員への教育や風土改革が欠かせません。定期的なトレーニングやワークショップを通じて、スタッフのスキルを向上させるような、持続的な改善とフィードバックの仕組みを構築することが重要です。システムでの効率化・人の育成や配置転換を進めていくことで、デジタルの導入・活用だけではない「院内の組織変革」すなわち真のDXを実現することができます。DXは一度きりのプロジェクトではなく、目的達成に向けた継続的な取り組みが必要です。定期的にプロジェクトの進捗を評価し、必要に応じて改善策を講じることで、期待する効果を得ることができます。以上の基本ステップを踏むことで、医療のDX投資を成功させるための基盤を築くことができます。組織全体が一丸となってこれらのステップを実行することで、DXの真価が発揮されます。実際の医療機関における、DXに向けた取り組み先進的にDXを推進している法人では、ありたい姿や目的を整理し、3ステップに沿って必要な取り組みを推進しています。例えば、200床規模ケアミックスの法人様では以下のような取り組みをしています。■目指す成果・職員の事務作業を軽減し、より付加価値の高い患者対応などに充てる時間を捻出したい。・長年システム担当だった方が退職し、次のタイミングでシステムに強い方を育成したい。・システム間の情報連携がうまくいっておらず、転記作業が発生している。連携費用は数百万円かかるため、コストを抑えて情報連携がスムーズにいくようにしたい。■デジタイゼーションの取り組み(システム導入)・RPAの導入による、PC業務の自動化■デジタライゼーション(システム活用推進)・RPA勉強会の研修に伴う交通費を負担し、職員への参加を促した。・RPA開発担当者(元医事課職員Aさん)と院内協力者が意見交換できる場を用意し、定期的に効率化を図る取り組みをしている。・職員Aさんの医事課における業務負担を軽減し、医事課→経営管理・情報管理の役割を担う職務への転換を図っている。弊社では法人様と連携して戦略策定・システム導入~活用までの実行支援をサポートしています。是非お問い合わせください。