「病院での外来受診が、まるで美容室やテーマパークのようにスムーズに進んだら?」そのような未来が、いま確実に近づいています。DX(デジタルトランスフォーメーション)という言葉が医療界でも聞かれるようになりましたが、病院ではまだ「紙・電話・人手」に依存した業務も多く、他業界と比べてデジタル化が遅れているといわれています。そこで今回は、他業界のDX事例をヒントに、「少し先の外来受診の未来」をのぞいてみましょう。キーワードは「もっと自由に、もっとやさしく、もっとスマートに」です。▰ 予約 ▰ スマホでサクッと、病院も「行きたいときに行ける」場所へレストランや美容室の予約は、いまや多くの人がスマホアプリで予約可能な時間を検索し、メニューと時間を選んで予約するのが当たり前になりました。この仕組みは、病院にも応用できると思いませんか?「今日受診できる先生はいるかな?」とアプリで検索し、予約可能な時間を選んでサクッと外来予約。検査や予防接種の予約も、スマホひとつで完結できます。さらに事前のWeb問診で症状を入力すれば、「この症状ならこの診療科がおすすめ」と病院や診療科の提案までしてくれる。受付窓口での「どこにかかればいいかよくわからない」と迷っていたのは、過去の話になります。▰ 受付 ▰ テーマパークのように、入口での手続きもストレスフリーに病院に到着したら、テーマパークのアプリのようにバーコードをかざすと受付が完了です。検査前の注意事項(例:腹部エコーの前には検尿不要)などもアプリが自動で判断して通知してくれます。どこで何をするのかを、アプリが教えてくれるので安心です。移動の順番も工夫されていて、無駄な待ち時間や行き来がグッと減ります。▰ 院内移動 ▰ 迷わない、探さない。病院内ナビがいつもそばに病院内で迷ってしまったことは、ありませんか?売店やトイレ、検査室の場所がわからずウロウロ……そのような光景をよく見かけます。でも、これからは違います。スマホを廊下に向けてかざすと、AR(拡張現実)で「行きたい場所までの矢印」が表示されます。地図が読めなくても、表示された方向に歩くだけです。案内板も床の線も、もう必要ありません。▰ 診察・処方 ▰ 待つ・取りに行く――これまでの“当たり前”が変わる診察の順番も、スマホで簡単に確認できます。診察室前でバーコードをかざすだけで、自分が何番目か、あとどれくらいで呼ばれるかがすぐにわかります。順番が来るとスマホに通知が届くので、ずっと座って待つ必要はありません。診察後は、アプリで処方されたお薬の確認ができます。慣れた薬局での受け取りはもちろん、自宅への配送も選べるため、体調がすぐれない日でも安心して帰宅できます。▰ 会計・帰宅 ▰ 「もう待たない」。アプリでの支払いと配車でスマートに帰れる病院で最もストレスが多いのが、診察後の「会計待ち」ではないでしょうか。でも、これからはそのような悩みもなくなるかもしれません。あらかじめ診療や検査の内容が電子的に記録され、自動で計算されるため、請求金額が確定するとすぐにアプリに表示されます。アプリ上でキャッシュレス決済を済ませれば、領収書や明細もすぐにスマホに保存されます。さらに、診察中にタクシーの自動配車を完了させると、玄関前にタクシーがスタンバイしてくれます。もう、会計やタクシー乗り場で待つ必要はありません。▰ 帰宅後のフォローとセルフケア ▰ 医療は“通院の後”も、あなたのそばに通院は診察を受けて終わりではありません。診断内容に応じて、アプリからおすすめのレシピや栄養素、運動などの生活習慣改善メニューが届きます。自分の治療計画や過去の検査結果の推移をアプリで確認しながら、日々のセルフケアを記録・管理できるようになります。もはや病院は「病気を診る場所」から、「生活を支える伴走者」へと進化していきます。▰ DXは、患者の「心のストレス」も解消できる ▰DXは業務の効率化だけではなく患者体験の高次化につながるこうした未来は、決してSFではありません。実際に最近ではWebで日時を指定して診察予約ができるクリニックが増えてきています。さらに、オンライン診療後に薬を自宅まで配送してくれるサービスも登場しています。すでに多くの技術は実現可能なレベルにあり、あとは「どう組み合わせて運用するか」の設計力が問われています。病院は「医療を受ける場所」であると同時に、患者にとっては「時間と不安を抱えて過ごす場所」でもあります。他業界のDXから学べるのは、サービス体験の最適化です。ほんの少しの工夫が、患者の安心と、職員の余裕を生み出します。医療の未来は、「もっと自由に、もっとやさしく、もっとスマートに」なるはずです。[次回予告]第2回:外来受診(病院職員視点)