病院におけるDXで求められる、患者経験価値(PX)の向上以前、弊社のお役立ち情報で以下のレポートを公開しました。■患者経験価値を実現する医師マネジメントhttps://nkgr.co.jp/useful/hospital-strategy-organization-86913/上記のように医師マネジメントの領域においては、患者経験価値(PX:Patient Experience)を重視した指標を設定することが増えてきています。これは医療機能の分化の中で、各医療機能で患者から求められることが、今まで以上に専門特化してきていることが背景にあると考えられます。また、先日以下のレポートも公開しました。■優良病院のマネジメントの共通項https://nkgr.co.jp/useful/hospital-strategy-organization-94999/経営的に優良な病院では、“実行の徹底度”と“戦略の妥当性”の双方が高まっているため、経営的な面だけでなく「地域に役立つ病院」にもなっていることを指摘しました。まさに患者経験価値が高まっているからこそ、地域住民や地元企業からクラウドファンディングで寄付が集まり、ドクターカーや医療機器の購入、建て替え費用の一部負担などの協力を得られているのだと思います。患者経験価値の向上とは、単なる患者満足度のことだけを示しているのではなく、その領域を超えることで、経営にも影響を与えるため重要となります。この患者経験価値を高める上で、DX(Digital Transformation)が重要になってきます。実際、以下のレポートで記載したようにDXの定義の中に「顧客エクスペリエンスの変革を図ることで価値を創出し、競争上の優位性を確立すること」が含まれています。病院におけるDXでは、その成果として患者経験価値(PX)の向上が求められます。■DXの前のデジタル化https://nkgr.co.jp/useful/hospital-quality-organization-96721/PXとDXのつながりをどうデザインするかでは、このPXとDXのつながりをどのようにデザインしていくべきでしょうか?弊社ではDXのステップを以下のように進めることをご提案しています。このように2040年問題としての生産年齢人口の急減を踏まえて、業界や自院のあるべき姿を明確にして、そのあるべき姿へ組織変革(CX)するためのデジタル化という点でDXを進めていくことをお勧めしています。特に、病院組織における組織変革としては、昨今、以下のようなトレンドがあると思います。従来の職能別組織から変革をし、同一臓器の内科系・外科系が一緒になった〇〇センターを設けて、働き方改革への対応を行う病院が出てきています。循環器内科と心臓血管外科のハートセンターや神経内科と脳神経外科の脳卒中センターなどがそうです。これらを一歩進めて、患者経験価値向上のために職種の垣根を超えた多職種協働型組織を実現する病院も出てきています。まさに患者経験価値を最上位に置くことで、多職種協働型のチーム医療の実現につながります。このように、患者経験価値向上を目的として、多職種協働型組織へ組織変革することを目標にデジタル化を進めていくことで、組織変革と患者経験価値の向上の双方が実現していきます。組織構造を大幅に変更しなくとも、組織変革と患者経験価値の向上が可能なケースもあります。例えば、電子カルテ上のバイタルデータをチェックして、状態が悪化しつつある患者の抽出を人手で行っていた場合、その業務をRPA(Robotic Process Automation)でデジタル化して、人手を上回る頻度で一日に何度もチェックすることが考えられます。この場合では、組織構造の変革ではないですが、デジタル化により担当者単位での役割変更という組織変革が実現し、従来以上にきめ細かい患者状態のチェックによる医療の質向上という患者経験価値向上に寄与するケースがあります。こうした組織変革と患者経験価値の向上の双方を実現する過程として、患者経験価値として求められる「価値の言語化」とその「KPIの明確化」が必要になります。弊社が医師人事制度を設計した病院では、医療機能別に求められる価値の言語化とKPIを明確にして、医師人事制度の定性評価(多職種による多面評価)と定量評価(目標達成度評価)を設計しています。こうして言語化された患者経験価値とそのアウトカム指標としてのKPIの改善・向上という判断基準で、デジタル化を進めることが、まさにDXとなります。DXという流行りの言葉に乗って「とりあえずタブレット」「とりあえずAI」というデジタル化を進めると失敗します。組織変革後のあるべき姿と患者経験価値を具体化し、そのゴールから逆算してデジタル化を進める事が重要になります。患者経験価値向上を目的として、多職種協働型組織へ組織変革することを目標にデジタル化を進めていくことで、組織変革と患者経験価値の向上が実現するDXになると思います。