「この業務が大変そうだから、やり方を変えてみよう。」業務改善の取り組みは、このような漠然とした理由で始まることが少なくありません。しかし、そもそもの課題があいまいなままでは、対策の妥当性を判断できません。さらに、どれだけ大変な努力をして改善しても、その効果を測定し、目に見える形で評価しなければ、達成感が得られず、次の改善への意欲につながりません。では、どうすればよいのでしょうか。答えは「データで現状を可視化し、効果を数値で示すこと」です。改善前と改善後を比較できれば、改善活動の方向性が明確になり、実感のある改善活動を行うことができます。■データがなくても「見える化」する業務改善のヒントは、現場にあります。現地現物を見て、現状を客観的に把握する。単純ですが、これが最も重要です。システムで時間が自動記録されていない場合では、タイムスタディー(時間観測調査)を行うことが有効です。例えば、検診の内視鏡検査の稼働率を上げたい場合、皆さんなら何から始めますか?まずは各工程の所要時間を計測してみましょう。すると、どこに課題があるのかが見えてくるはずです。検査そのものの時間は変えられなくても、「患者の着替え」「患者への検査説明」「検査前の準備」「検査後の片付け」といった一連の時間を計測することで、改善のポイントが明確になります。そして、改善のポイントがわかれば、対応策も見えてきます。患者の着替えに時間がかかるのであれば、受付から更衣室への案内方法を工夫したり、検査時間に必ず着替えを済ませた状態で待合席にいてもらうようアナウンスしたりするだけでも、1人当たり5分ほど短縮できるかもしれません。一件の短縮はわずかでも、積み重なれば大きな時間になります。それにより、1日1枠でも予約を増やすことができれば、それは確実な収益向上につながります。小さな改善が、大きな成果を生むのです。■病院のシステムに眠る「情報の宝庫」病院には、すでに膨大なデータという宝の山が存在しています。悲しいことに、最低限のシステム操作でしか使われず、膨大なデータが日の目を見ないことが現状ではないでしょうか。電子カルテには、診察の受付時間、検査の開始時間、検査結果が出た時間、会計が完了した時間など、職員の行動が「時間」という客観的なデータとして記録されています。これらの時間のデータを使うことで外来のオペレーションを根本的に見直すことができます。例えば、午後の患者数が少ない時間帯の外来診察枠を短縮したい、という課題があるとします。電子カルテの記録から、外来患者のデータを出力し、医師別・日別・時間帯別で1か月の外来診察患者数を集計することで、診察時間を繰り上げても現状の患者数を診察できることがデータで裏付けられるかもしれません。もし1時間半早く診察時間を切り上げられたら、それは単に医師の時間外労働が減る、という話に留まりません。空いた時間を活用して、日勤帯のうちに入院患者のオーダー出しを完了できれば、これまで夜勤の看護師だけで対応していた指示受けの負担が軽減されます。さらに、外来の看護師は病棟業務のサポートに回るなど、病棟が交代で一番忙しい夕方の時間帯に協力する体制を構築できます。時間外の指示出しに困っているのは看護師だけではありません。臨時の院内処方を処理する薬剤師、食事変更を行う栄養士、至急検査に対応する臨床検査技師や放射線技師など、医師の指示のもと業務を行うすべての職種に影響します。■データによる「合理的な改善」へデータを活用すれば、感情ではなく事実で議論できます。「誰かの思いつき」ではなく、「目的と効果を明確にした合理的な改善」になります。データ活用は、病院の運営を変えるための強力なツールです。まずは、日々の業務に隠れた「時間」というデータを掘り起こし、見える化してみましょう。根拠ある改善が積み重なれば、現場は強くなり、病院経営はより持続的に発展します。「なんとなく」ではなく、「データに基づく改善」こそが、これからの病院を支える原動力です。